Featured image of post 『愛されなくても別に』武田綾乃

『愛されなくても別に』武田綾乃

家族との、とくに母親との関係性に難を抱える女子大生三人の話。主人公の宮田は浪費家の母のために高校生のときからバイトで月8万を家に入れる生活を続け、さらには離婚した父からの養育費と自身の奨学金も使い込まれていたことが発覚し家を出て、宮田の大学の同級生かつバイト仲間で、小学生のころ父に性的虐待をうけ中学からは母親に売春をさせられていた江永と同居するようになる。同じく大学の同級生の木村は裕福に見えるが、ある日宮田の働くコンビニでバイトしはじめた。木村は過保護な母親から過干渉を受けており、それから逃げるように新興宗教にはまっていて……。

武田綾乃の作品を読むのは多分今回が初めてなのだが、『響け!ユーフォニアム』の原作者ってイメージが強くて青春小説っぽい作品を書く作家なのかと勝手に思っていたらわりとイメージと違って(ユーフォニアムも読んでないのでそもそも青春小説のイメージが間違いなのかもしれないけど)、女子大生のリアルな苦しみ(というにはあまりに苦しすぎるかもしれないが)と苦悩を描いたヒューマンドラマ的な話だった。宮田はおもに金銭面で苦労していて自分を不幸に感じており、金銭面以上のインパクトのあるエピソードを話す江永に対しては自分よりも不幸な人がいると恥いるも、木村には結局金銭面で苦労してないんだから甘えてる、そんなの不幸じゃないと内心見下している。そういう不幸マウント的な感情は身に覚えがあるなと感じてしまった。大学生の不幸・母娘の関係・新興宗教といった題材は小説のテーマとしてはありふれたものだが、そういった不幸を感じる若者の内心の描写は秀逸な作品だと思う。

Built with Hugo
Theme Stack designed by Jimmy