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『生のみ生のままで〈上〉』綿矢りさ

また綿矢りさ。 女性同士の恋の話。

綿矢りさの女性同士の恋の小説というと『ひらいて』(これは女性同士の恋の話と括っていいのかどうか要審議だが)も読んだことあるけれど、こちらはより純な感じ。

それぞれが交際している彼氏と出かけた旅先で偶然出会って、それまで同性に対して恋愛感情を抱いたことなかったはずなのに一方は一目惚れして、もう一方も相手に対して惹かれていく。 そんなことがあるんだろうかとは思うけど、彩夏が逢衣に恋するまでを語るところは本当に情熱的で文章に引き込まれる。

一方で、逢衣がどこで彩夏に惹かれたのかは作品中で逢衣によって直接語られるところはあまりない。ただ旅行先での第一印象は最悪だったのがカミナリとサイコロの件を経て印象が大きく変わり、友人となった後での携帯ショップの一件とで、人として惹かれるという意味では決定的になったのだろう。 それが彩夏の告白と行動によって関係性が友人から変わってしまったところで、ガラッと大きく動いてしまったのだろうか。 彩夏は売れっ子芸能人だしあまりに恋愛に対して情熱的だしで(素敵な人なんだろうとは思うが)自分としてはあまり共感できないのだけど、逢衣には共感するところもあるし気持ちの変化にすごく想像力を働かせながら読んで楽しむことができた。

この上巻は、最後で引越しして新しい良い新生活がスタートすると思いきや、ストーリーが一気に不穏になったところで終わる。 ここから逢衣と彩夏がどう動くのか下巻を読むのがとても楽しみ。

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