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『生のみ生のままで〈下〉』綿矢りさ

『生のみ生のままで〈上〉』の下巻。

上巻の最後で彩夏の事務所に引き離された(というか逢衣が身を引いた)後、数年後に彩夏が病気で芸能活動を停止したことをきっかけに再会する(というか逢衣が押しかける)と、彩夏は逢衣に対して拒絶するような態度を取る。

上巻では彩夏には共感しきれないところがあって逢衣にばかり感情移入していたが、(本当は今でも好きで好きで仕方ないけれど、再開して受け入れた後でまた離れることになったら耐えられないし、そうなるとしか思えない)という彩夏の思いの方に今度は引き込まれた。

その彩夏の拒絶する態度は、逢衣が彩夏を引き取って看病・サポートしていく中で少しずつ融けていく。この少しずつ融けていく態度の変化を小説で文章として表現するのってなかなか難しいと思う(そういう表現をしようとしていても、結局なんかのきっかけを機に急に態度を変えたように読めてしまう小説作品は多い)のだが、そこはさすがの綿矢りさというところで、本当に少しずつ彩夏が逢衣に対する態度を変化させていく様子が目に見えた。

そして彩夏の芸能活動復帰や、逢衣の両親との関係性などの出来事を経て、最後のクライマックスのシーンに移っていく。最後のシーンはすごく美しいので、この作品を読み始めた人はぜひ最後まで完走してほしいと心から思う作品だった。

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